≪奇形魚について(1)用語と水槽における観察≫ 「土岐の子守歌」二胡演奏:泉貴子(きこ)

奇形魚
 奇形とは、生物が「先天的」に形態上の異常を持っていることを指します。その結果として機能障害をきたすことがあります。動物においては、胎児が成長する段階、なかでも器官が形成される胚芽期に外因・内因の影響を受けることが重要な条件です。逆に、妊娠後期は器官がほぼ完成されているため外的な有害作用を受けても、奇形となる可能性は比較的低いのです。
 養殖魚に「奇形魚」が多いということが色々な本に書かれていますが、厳密な意味では「奇形」魚でなく、「変形」魚というべきではないかと思います。魚類は胎生生物ではなく、卵生生物で、卵の中である程度の発育をして、稚魚として生まれ、両生類のようには変態することなく、そのまま大きくなって成魚になります。稚魚には変形した魚はみられないそうです。従って成魚になってから後天的な原因によって変形が起こるのではないかと思います。
 変形は背骨、筋肉、靱帯のいずれかに原因があって起こるとすると、まず背骨の骨折か変形をまず考えるべきでしょう。そうすると何らかの原因で骨が折れやすくなったり、変形しやすくなっている可能性があります。私がまず思いつくのは、子供の「くる病」と年寄りの「骨粗鬆症」です。魚の背骨に代謝的な異常が起こっていて骨折や変形を起こしているのではないかと想像します。

 左に示した魚の写真がいわゆる「背曲がり」です。曲がりの程度は軽いものから重いものまで様々で、中には二ヶ所の曲がりがあるものもあり、頭部の大きさに比較して下半身が小さくなっています。筋肉が萎縮していると考えられ、泳ぐ力はかなり低下していると思われます。もちろん、確定的なことは言えませんが、それを示唆する文献や情報をこれから下記に並べていきたいと思います。


(1)"背曲がり" 魚をgoogleで検索すると、1番目に出たHPには、ある川で見られた「背曲がり魚」に着いての質問があり、回答はには、富山医科薬科大学上村清さんによる第41回虫の知らせ“農薬垂れ流し”のHPが紹介されています。(残念ながらこのHPへのリンクは現在、無効でした。)ただコメントとして、「有機リン剤のEPNなどは魚毒性が強く、コイなどの背骨を脱臼、骨折させて背曲がり魚を発生させるとの指摘があります。」と書いてあります。
 ENPについては「日産化学が国産化。稲のほか果樹、野菜の広範囲の害虫に有効で、残効性もある。残留基準値は昭和40,50年代に設定されている。残留農薬研究所は変異原性なしとしている。慢性毒性などのデータは明らかではない。急性毒性が強く、皮膚からも吸収されやすいので注意を要する。遅発性神経毒性があるため、被曝後、すぐに症状は現れずに、徐々に中枢神経が侵され、一ヶ月も経過してから悪化する場合があるという記載もある。水道法では、飲料水中に検出されてはならないとされている4種の有機リン剤の一つ。分析報告数が多く、検出率も高い(5.3%)。■残留基準値:米(0.1ppm)、果実、野菜、茶(0.1ppm)、夏みかん果皮(0.5ppm)■土壌中半減期:7〜16日▼毒性:魚毒性B-s類■生物濃縮係数(BCF):2346(大)■一日摂取許容量(ADI,mg/kg)なし■飲料水基準(μg/l):6(日本)」とありました。

(2)水槽で魚を飼っている人たちの観察:愛好家だけあって、観察が細やかで、その原因や治療、エサとの関係など、愛好家同士のやりとりがインターネット上に記されています。
 このHPはオイカワの背曲がりについて、その「現場」を見た様子が書かれています。質問は「テッチャマン」で、「去年の秋に捕ってきて飼っているオイカワのほとんどが背曲がり病になってしまいました・・・。先日、一番元気で婚姻色が出始めた個体も曲がっているのを確認しました。この掲示板の過去記事をいろいろ見てみても、栄養不足や、光が足りない、水質悪化、水流の弱さ、水槽のせまさなど、この背曲り病の原因にはいろいろな説があって、どうしたらいいのかとても困っています。やはり、60cm(小さな水槽)で、これだけの魚たちを飼うのはきついのでしょうか。」

  この質問に対して「西村」さんの回答は、「過去に飼っていましたが90cm水槽に移動させました。オイカワの大きさにもよると思いますがどうしても90cm水槽くらいないと驚いたりしたときに障害物に衝突しやすいですね。・・・農薬が流れて骨折や脱臼というのは水槽ではまず考えられませんね。採集でバケツに入れた憶えはないのに背曲がりになった魚がいたことがありました。 これはバケツの中で突発的に起こったことだと思われ防ぎようがありません。デメモロコが驚いて砂に潜ろうとして曲がったままになったのを目撃したことがあります。 これは突発的なようでもありますが飼育環境によっては防げていたことかも。 こうした場合の背曲がりは上から見てくの字が多く、突発的な骨折や脱臼かもしれません。逆に横から見てくの字は端的にいえば餌が原因だと思います。特にオイカワのほとんどが背曲がり病になるのは突発的だけとは思えません。 コイ科魚類で背曲がりになる主な原因は栄養素欠乏か古い餌だと私は思っています。 狭い水槽だからこそ背曲がりになりやすいというのはあるとは思いますが。例えば家庭水族館という本には30種類以上の病気や障害が記されていますが、 そのうち「脊椎の湾曲」とあるのだけ拾ってみました。ビタミンC欠乏、マグネシウム欠乏、必須アミノ酸欠乏、リン欠乏の4つだけです。 そこで餌を考えてみるわけですが、このうちオイカワはどの餌を実際に食べていますか。 ほとんど冷凍赤虫や金魚の餌ばかりだったりしませんか。餌は古くありませんか。 背曲がりはまず治りませんが今後はもっと色々な餌を与えたほうがよいでしょうね。昔うちの水槽は横から見てくの字や背こけの魚がよくでました。 しかしアユの餌を主食にしてから随分と減りました。アユの餌はそれ以来ずっとうちの魚たちの主食として使い続けています。 ただ手に入り難いしメーカーによって成分が異なるなど入手に問題ありです…。

 続いて「こうすけ」さんからのコメントは、「せまがりというのとはちょっと違うかもしれませんが・・・我が家でもう4年くらい飼っているカワバタモロコが、昨年末に換水の際、びっくりして流木の隙間に挟まり、抜けられなくなってしまいました。ほうっておけば抜けられたかも知れないのですが、あまりにかわいそうで、木を割って救助しました。それがかえってよくなかったのか、腹部に大きな傷を負い、体もくねっと曲がり、文字通り瀕死の状態になってしまったのです。ちょうど翌日から我が家は1泊の家族旅行に出かけることになっていて、面倒を見てやることも出来ません。かといって同じ水槽に放置すれば仲間にいたぶられることになるだろうし、4年も飼ってきた愛着からひと思いにというのも出来かねました。悩んだ末、ここならなんとか重力に対して正しい向きを保てるかと思って、底を絞った三角になっている産卵用のケージを水槽内にぶら下げ、その中に瀕死の個体を入れて出かけることにしました。帰ってきてまだ生きていたらなんか手を考えようということで。。 で、帰ってきたら、苦しそうにまだ呼吸しています。 とりあえず、ケージに入れたまま、サーモスタットで水温を上げて餌もケージ内に個別に与えること2週間くらいでしょうか、自分で泳げるようになリ、なんだか背中もシャンとしてきました。 今では水温も非加温に戻しましたが、すっかりふつうに泳いでいて、今まであまり病魚の治癒に成功したことがなかった私ですが、よかったよかったです。」

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海洋汚染を考える会