≪奇形魚(2)TBTOについて≫

奇形魚本TBTO
 左の本は1987年に出版されたもので、著者は八竹昭夫氏、合同出版株式会社からです。本の副題が「奇形魚はなぜ発生するか?」 となっており、主に養殖ハマチの漁網防汚剤・TBTO(トリブチル・チン・オキサイド)の危険性を問題にしています。

TBTO

 P.38-39にはTBTOの説明が載っています。要約すると、TBTOは養殖生簀(イケス)の網の潮通しを良くするため、網をTBTO浸漬槽に入れ、あと天日曝気 して使用するそうです。網に海草や貝が付着するのを防ぐ、網の除草剤とも言える薬剤です。他の防汚剤より効果が長持ちし、経済性に優れていました。


 この物質については、後述することがあると思いますが、本の中に、著者がヒメダカの孵化と稚魚の孵化と生存と奇形に対する毒性試験が掲載されています。

ヒメダカ1

 TBTOを水に加えると濃度依存的にヒメダカの卵の孵化率が下がり、孵化しても24時間から12日以内の死亡率が高かったのです。濃度が低いと、孵化した稚魚に体の湾曲や尾部の変形が見られ、 直進できない遊泳異常を呈しながら死滅したそうです。孵化の遅延がみられるものの、孵化率には影響のない程度のTBTO濃度では、稚魚に13%程度の変形が見られたました。 著者はこの実験結果を1986年の日本臨床獣医学会年次総会で発表し、大きな反響を呼んだそうです。

ヒメダカ2
 ここに引用した4ページだけでも、実に多くの水産、養殖、乱獲などについての日本の漁業が抱える問題が指摘されています。日本の近海漁業の豊かさはすでに半ば失われた状態にあるのでしょうが、さらなる海と漁業の荒廃をふせがねばならないでしょう。
 ただここで指摘したいことは、この本の副題が「奇形魚はなぜ発生するか?」とありますが、TBTOは稚魚に影響が大きいものの成魚の奇形・変形魚には影響が少ないことでっす。また後にTBTOとそれを含む船舶用塗料が1987年頃から世界各国で使用禁止になったにもかかわらす、背曲がりという変形魚は有明海や世界中の特定の海域や淡水域で、今も 発生し続けているということです。つまり多量に使われ、今は禁止されたTBTOは、背曲がりという変形魚の発生にはあまり関与しておらず、何か他の要因が存在するのではないかということです。

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海洋汚染を考える会