≪海苔の養殖について調べてみました。≫
1.日本人の食べ物としてのノリ
・食用海草:ノリ、コンブ、ワカメ、ヒジキ。
2.ノリの養殖、栄養価
・ヒジキはヒ素の含有量が高い。海水中:0.001ppm, ヒジキ中:100ppm, 10万倍の濃縮。
・縄文時代の遺跡に、アラメ、ホンダワラ、ワカメが見つかっている。
・奈良時代には租税としてアマノリ、ミル、アラメ、デングサ。
・祭礼の供物にも。トコロテンも作られた。万葉集には「藻」としてよく出てくる。
・平安時代にも租税として記録され、貴族階級の食品となっていた。
・室町時代以降、寺を通じて一般家庭に。戦国時代には備蓄用食品の一つに。
・漉きノリが出る以前は岩ノリを食べた。
・江戸時代中期以降、漉きノリが庶民の食品になった。
・秋の彼岸から春の彼岸にかけて成体(藻体、葉状体)を収穫し、水洗い、裁断してペースト状に。
3.ノリという植物の生活史と養殖技術の進歩
・四角に漉き、乾燥。1枚が約3グラム。1983年日本で108億枚。
・蛋白質含量が多く、遊離アミノ酸(グルタミン酸、アラニンが多い)、ミネラル(特に亜鉛が多い)、ビタミン(特にAが多い)。
・タウリンやEPA(エイコサペンタエン酸)が比較的多い。
・アオノリ(緑藻類):海苔佃煮にする。
・アマノリ(紅藻類):アサクサノリは現在は絶滅危惧種。現在はスサビノリが主で色彩、仕上がり、うまみ、香りがすぐれている。
・栽培品種は100種ほど。中国ではスープ用。日本は紙様。韓国は両方。
・江戸時代から品川で元禄頃?からノリ養殖。
・日本には約20種のノリ。始めは岩についたノリを摘んでいた。東京湾のアサクサノリが養殖の始まり。
・9月下旬から10月初旬に浅海に、ほうきを逆さに立てたような竹や木の枝を立て、これに野生のたね(殻胞子)を付けた。
・その後、50から60日、ノリを育てた。潮の干満によって数時間ノリを空中に露出させることにより、ケイ藻類などの競合生物の付着を防いだ。
・多くのアマノリ類は水温が下がり、日の長さが短くなると幼葉が発生し、冬にそれが育ち、3〜4月には流れて消える。
・昭和の初めから縄、後に合成繊維の網を支柱に結ぶ「浮き流し法」となる。
・ノリの生活史
(参考資料:「海草の本―食の源をさぐるー」西澤一俊、村杉幸子著、研成社、昭和63年。
・殻胞子は水温23度前後以下で、海水の流れが大きい大潮(=新月や満月の1,2日後。その約1週間後が小潮。)の時に糸状体(2n)の胞子嚢から放出される。
・糸状体の存在は1949年、ドリュー博士(女性)によって発見され、ノリ養殖上の最大の発見であった。
・殻胞子は貝殻などに着いてまた糸状体になる。これを人工的に牡蠣の貝殻に付かせて、養殖筏に吊す。(現在は凍結保存した養殖網を解凍して海に入れる。)
・15〜20度の水温で発育する。30度以上では死ぬ。
・藻体(n)は春の彼岸から夏至まで糸状体から発生する。
・藻体の一次芽(葉状体)を初冬に刈り取る。二次芽を2週後に刈る。
・葉状体からは葉状体の細胞そのものが胞子(原胞子)となって放出され、発芽してまた葉状体になるサイクルもある。(それで糸状体は奇形とみなされていた時期もあった。)
・食べているノリは葉状体で雌雄同株だった雌雄異株だったりする。)
・春3月以降は水温が上昇し、葉状体の縁部や先端に生殖細胞(接合胞子)が形成され、流出し、葉体は小さくなり、岩についた仮根がはがれ、全体が脱落する。
・春から夏の高温で日照が長い時期には接合胞子からできた糸状体(貝に穴を開けて育つ)で過ごす。夏の終わりから秋に再び葉状体に生育する。
・現在は葉状体を-196度で凍結保存し、原胞子の誘導・放出は葉状体を培養し、液温をやや高くすると1−2日で放出が起こる。
・糸状体は貝に付着しているため、凍結保存は難しいが、他地域への運搬や種の保存に用いられる。
・生産量が急増したのは、ノリ網に殻胞子を付着させ、葉状体が葉長2−3センチになるまで数週間養成し、この「たね網を-20〜-30度で長期間凍結して保存」する。
・これを季節になったら海に入れて育て、葉状体を4−5回刈り取りし、新たなたね網と交換する。これを3月中旬まで繰り返すことができるようになったため。
・ノリ産業の規模は1000億円。
・ノリの色:未成熟の葉体が本来の色で、殆どは黒っぽい紫色から褐色、部分的に異なり、根元付近は緑。成熟して接合胞子を付けると赤色ぽくなる。
・潮が引いても海面に露出しない深いところでは赤色から紅色。これは光の海水による吸収による。深いところでは相対的に長波長の光が届く。
・ノリを焼くと特定の色素(紅色)が消え、やや緑色になる。
・ノリの主流はあぶらずに食べる黒光りするノリ(スサビノリに属する)に変わった。この方がおにぎりの販売に便利。
・赤潮が発生すると、葉体は黄色になる(色落ち)。競合する藻類が海水中の窒素やリンなどの栄養分を奪って増殖するため。ノリ不作の原因となる。手の打ちようがない。
・水温が上がると、アオノリやアオサがついてノリの生育を邪魔する。
・その対策として、網筏を空中に露出するか、手間を省くため、舟上で、一度、藻体をクエン酸と塩化アンモニウムが主成分の処理液(商品名:グリーンカットなど)に浸し、再び海中で養殖を続けることで駆除する。
「海苔という生き物」能登谷正浩著、成山堂書店、平成14年。
「スサビノリの一生」のスライドは江刺洋司名誉教授の提供)
海洋汚染を考える会