≪報道は正しいか?その研究は有明海の汚染の原因を説明できるか?≫
まず佐賀大の研究の記事をお読み下さい。 「国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門の閉め切りが、二枚貝タイラギの不漁が目立つ佐賀県南西部沖で、海底の粘土化をもたらした可能性がある、との研究成果が21日に佐賀市であったシンポジウムで公表された。
佐賀大の有明海総合研究プロジェクトチーム(山下宗利プロジェクト長)が5年間の研究をもとに分析した。有明海特産のタイラギは、十数年前から不漁が続き、2004〜05年度は休漁に追い込まれた。漁場の土砂の粒が粘土化し、稚貝が発育中に「立ち枯れ」している、との指摘がある。佐賀大の速水祐一准教授(沿岸海洋学)らは、水中を浮遊する粘土などの粒子に着目。実測データやシミュレーションなどで粒子の動きを解析した。有明海底層の粒子は、年間を通じて有明海の奥に北上することを実測で確認。また、諫早湾内で底から巻き上げられた泥の粒子が湾外に流出していることも確認した。湾内からの粒子の流れを、堤防がある場合と無い場合の両方を想定してシミュレーションした結果、堤防がある場合には、島原半島に沿う流れや湾内に戻る流れが弱くなると解析。湾外に出た粒子が、北上ルートに乗ってタイラギ漁場のある佐賀県南西部・太良町沖に運ばれ、粘土化をもたらした可能性があるとの見方を示した。
速水准教授は、堤防の閉め切りがこうした水中の粒子の移動の変化を引き起こし、「湾外の底質分布に影響した可能性がある」と指摘した。」
「感想」
次は朝日新聞の特集記事です。なぜか漁民による海苔養殖の際に使用・廃棄される有機酸液のことには全く言及されていません。半閉鎖的内海に有機酸を大量に廃棄すれば、プランクトンの種類の変化や魚介類の酸欠による死亡・減少が予測されるのはないでしょうか?それは日本の他の湖沼の汚染と同様です。漁民は不漁の補償という目先のことより、まず有機酸を希塩酸による海苔の処理にして、使用後には中和して塩にして海水汚染を防ぎ、もとの自然を取り戻し、赤潮のない有明海で、永続的な漁業や養殖業をするべきではないでしょうか? 海洋汚染を考える会
まず、諫早湾にギロチンダムが出来た時期と有明海で二枚貝タイラギ漁の不漁が始まった時期の関係を考慮する必要があります。タイラギの不漁はギロチンダムによる諫早湾閉鎖の前から始まっています。また、この研究報告では、泥の粒子の移動以外の要因がまったく考慮されていません。環境問題、特に有明海におけるタイラギ漁や海苔養殖の不漁には様々な要因が関与している可能性があり、他の要因を考慮しないで、ギロチンダムによる泥の粒子の移動の変化だけで、問題の説明ができるとはとうてい考えられません。